日本は海外に比べて新築住宅に住む意識が高いといわれています。それには長年、木造住宅が主流だった日本の歴史や風土が関係しており、古くなったら建て替えるといった考えが根強く残っていることもひとつの要因です。
しかし近年では耐用年数の長いマンションなど、木造住宅以外の住宅も増えてきたことからリノベーションへの需要が高まってきています。そこで今回は、マンションでおこなうフルリノベーションにスポットを当てて紹介していきます。
Contents
スケルトンリノベーションが選ばれる理由

既存の住宅が新築だった頃の性能はそのままに「老朽化した住宅を修復する」目的なのがリフォーム。それに対し、リノベーションとは既存の住宅全体に工事を施し新築の頃よりも「住宅の性能を向上させ、価値を高める」といった意味合いを持ちます。
「中古マンションを購入して自分たちのお気に入りの空間にしたい!」リノベーションを考えている人にはそんな想いも込められているでしょう。そこでおすすめしたいのは、「スケルトンリノベーション」という工法です。ではどういった工法なのか、詳しく見ていきましょう。
スケルトンリノベーションとは?
スケルトンリノベーションとは、既存の天井・壁・床を取り払い、構造部分だけを残した状態でおこなう工法です。構造部分だけを残すことで自由なプランを立てることができ、大胆な間取り変更や、電気や水回り設備の新設・配置換えなどを一気におこなうことができます。
部分的なリフォームに比べて費用はかかりますが、スケルトンにすることで壁や床などの見える部分はもちろん、電気配線や水道配管など見えない部分も同時に工事が可能になります。
スケルトンリノベーションの流れ
マンションでスケルトンリノベーションをおこなう際の基本的な流れです。依頼する業者によって細かな部分は異なりますが、スケルトンリノベーションをおこなう場合はおよそ3ヶ月を要します。
フルリノベーションってどんなことができるの?

フルリノベーションの魅力は既存の間取りにとらわれず、家族構成や生活習慣に合わせて自由な間取りを描ける点です。間取り変更したリノベーションでは、以下のようなプランがあります。
・水回り設備の配置変更
・フロア全体の動線見直し
・部屋の拡張・増設
ワンフロアというマンションならではの構造も、壁や天井を取り払うことで理想の間取りを叶えることができます。
マンション+フルリノベーションのチェックポイント
構造部分だけを残すことで、部屋全体を自由に設計できるスケルトン工事ですが戸建て住宅にはないマンションならではの注意点もあります。

物件を購入した後に、思ってもみなかった落とし穴があるかもしれません。そんな失敗が無いようマンションのリノベーションに欠かせないポイントをチェックしていきましょう。
1. 間取り変更のしやすい構造・しにくい構造
マンションの構造は大きく分けて2種類あります。
1つ目の「ラーメン構造」は柱と梁で建物を支える構造なので、ほとんどの壁や床を取り除く大胆なリノベーションをおこなうことができます。2つ目の「壁式構造」のマンションは構造体となる壁で建物を支えています。構造に関わる壁は取り除くことができないので、「ラーメン構造」に比べると間取りの変更にはいくらか制限がかかってしまいます。ゆえに、間取り変更には「ラーメン構造」の方が適していると言えます。
大きく間取りを変えるリノベーションを考えている場合は、必ず事前に構造を確認しておきましょう。
ラーメン構造 |
![]() |
・高層マンションに多い構造。
・間取り変更のしやすさ ◎ |
壁式構造 | ![]() |
・5階以下の中層マンションに多い構造。
・間取り変更のしやすさ △ |
2. リノベーションの意外な落とし穴!マンション規約を確認しておこう。
主にマンションでのリノベーションの対象となるのは居住空間内の【床・壁・天井・浴室、キッチン設備】などです。これを「専有部分」といいます。対して、マンションの住民全員で共有する場所は「共用部分」といい【構造に係わる躯体・外壁・廊下・窓枠、窓ガラス】などは基本的にリノベーションできません。
しかしマンションによって居住空間内(専有部分)であっても、以下のような工事が禁止されている場合があります。
専有部分で禁止されたリノベーション事例 | |
■ガスからオール電化へ変更したい。 | マンションの電気使用量が定められている。 |
■カーペットからフローリングへ変更したい。 | 階下への騒音回避のため禁止されている。 |
■水回りリノベーションをしたい。 | 排水の流れを確保するために床を上げて傾斜を確保する場合は工事可能か、既約の確認が必要になる。 |
このように構造的には可能なリフォームでも、マンション規約でできなくなるケースもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。
3. マンションの築年数による構造の違い
築年数によっては配管などが壁に直接埋め込まれていることがあります。構造に関わる壁の場合は取り除くことはできないので、設備の増設や配置換えは難しくなります。
その点、2000年以降に建てられたマンションは、あらかじめ配管が交換しやすいように建てられているスケルトン・インフィル構造の場合があります。
スケルトン・インフィルとは・・・
「スケルトン」(=住宅の骨組み、構造部など)と「インフィル」(=内装、電気配線、水道配管など)で構成された住宅。設計の段階から将来的にインフィル部分の変更がしやすくなっている。 |
マンション+フルリノベーションの費用っていくらかかるの?
マンションフルリノベーションの味方。「定額制料金システム」
定額制料金システムとは、坪数・平米数といった家の広さに対して工事の内容と価格が設定されているシステムです。
長らくリノベーションは施主の好みに合わせて、イチからプランを組み立てていく方法が取られていました。従来の方法は自由度が高い分、自分たちで色や形や素材などを決めて行かなくてはいけないという非常に難しい側面も持ち合わせていました。ですが「定額制システム」は、あらかじめリノベーションに必要となるであろう工事内容を標準化し、資材や設備の仕入れを絞り込むことで【安く・分かりやすく】を実現しています。
プランによってはキッチンや浴室の設備も予算の中で選ぶことができるので、色々見て迷ってしまうという事も少なくて済みます。リノベーション需要の高まりもあって、現在多くのリノベーション業者がこの「定額制システム」を取り入れています。
メリット
・工事内容と料金が明瞭化されているので分かりやすい。 ・プラン内であれば追加の料金はかからない。 |
デメリット
・プランに含まれない工事は追加料金になる。 ・素材や設備は自由に選べない。 |
「定額制システム」に組み込まれている工事内容例
プランや価格は業者によって変わってきます。まずは自分がしたいリノベーションを細かく書き出し、リノベーションの希望と予算に合ったプランを選択しましょう。
基本のプラン | おおよその価格 |
①床(フローリング)貼替え
②天井貼替え ③壁紙の張替え ④配管交換 ⑤キッチン交換 ⑥浴室交換 ⑦洗面台交換 など |
1平米あたり10万~20万円
↓ 60㎡ =
80㎡ = ※2LDK 平均50~60㎡ / 3LDK 平均60~70㎡ |
まとめ
マンションの主流である鉄筋コンクリート造(RC造)は耐久年数がおよそ100年、内装や配線・配管は20~30年が目安とされています。
築25~30年の中古マンションが増えてきている現在、まさにマンションのフルリノベーション需要が高まってきています。これから住宅購入を考えている、若い世代の方にとっても充分に将来性のある選択の1つです。
興味を持った方は、ぜひ一度検討してみてはどうでしょうか。